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陥没事故はなぜ起きたのか

陥没事故はなぜ起きたのか 外かく環状道路陥没の検証

堀江博著、出版社高文研、2023年1月20日発行の本の紹介をします。

 

2020年10月、東京都調布市の外郭環状道路のトンネル屈伸の真上で発生した陥没事故 その影響はトンネル真上以外の可能性もと、報道されているが、その真相は?

 

著者は、大手ゼネコンを2019年に退社。在職中は、液状化対策関連工事を含む地下工事の計画、設計、施工等に関わってきた。地下ガスの挙動、自然由来の地下ガスだけでなく 人工的に地盤内に注入されたガスに注目し、調布での陥没事故を含め、トンネル事故にも そのガスの挙動が関わっていると説いています。

 

このプロジェクトは 2014年3月 都市計画事業として認可され、2017年2月シールド機の発進式が行われた。その3年8ヶ月後、立て杭位置から北へ約4.5kmの地点、深さ約50m の地盤を掘進中に、掘進地点の約120m後方で、トンネル真上の地面が陥没しました。

 

事故原因は、「カッター回転不能時(閉塞)に、土砂を過剰に取り込んだことによる」 となっています。「土壌を過剰に取り込んだ」とは、必要以上の土砂をトンネル工事で掘削することで、その掘削により地盤内の圧力が低下し、地盤が自立できず、崩れる可能性があることを示しています。

 

このプロジェクトに対して、2017年工事差し止め請求が、東京地裁に提出されていました。 その決定は、2022年2月28日にあり、請求の一部が認められました。内容は、

東名立杭発信に係るトンネル掘削工事において、気泡シールド工法によるシールドトンネル掘削工事を行い、または第三者をして行わせてはならない。

 

気泡シールド工法とは、シールド機前面から、土砂に流動性を持たせて、掘り易くするために、空気を注入するものです。空気は、使用後に消えて、大きな影響を与えないと考えられていますが、少量ならともかく、大量の空気を注入したら、どうなるのかは何人も想像できないし、何も起こらないと断言できる人はいないでしょう。

 

著者は、工事差止めとなった気泡シールド工法で使用されている「気泡(空気注入)」が、今回の陥没の原因であったことを、科学的現象に基づいて示しています。

 

シールド工法によるトンネル工事は、都市部をはじめ、さまざまな箇所で実施されています。各地でトラブルが発生していますが、マスコミが取り上げるのは、発生した場合のみです。原因の追究や、未然に防ぐ手段等について、検証が必要と感じました。